* 2018 越後妻有 アートトリエンナーレ! *

3年に1度、越後妻有で開催される『大地の芸術祭』の旅行記です。


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4.最後の教室

さて、腹ごしらえも済んだところで、3つ目の目的地に向かいます!




廃校になった小学校を再利用して作った作品。

その名も『最後の教室 (作:クリスチャン・ボルタンスキー氏 + ジャン・カルマン氏)』。


個人と大多数の生と死を題材にした、芸術祭の中でも 特に異彩を放つ作品です!

それまで行われた、大地の芸術祭でのアンケート結果において、なんと
老若男女合わせて『最も印象に残った作品』として、ランクインしています。


古めかしい、どこか陰を感じさせるこの廃校の校舎に、一体どんな作品が待っているのでしょうか…
いざ、突入ーー!!(拳)





最初に出迎えてくれるのは、今回の2018年度の芸術祭に合わせて新しく作られた
『影の劇場 〜愉快なゆうれい達〜 (作:クリスチャン・ボルタンスキー氏)』です。

操り人形になぞらえたような、骸骨や悪魔、お化けのシルエットが、影絵として浮かび上がる
コミカルでありながらも、どこか陰のある雰囲気を持ち合わせる作品です。

風を受けると、お化けたちのシルエットが奇妙にカタカタ揺れるのが、また印象的。






入り口である体育館の扉を開けると、そこから先はもう、まさに別世界。

燃え尽きる前の線香花火みたいな、裸電球のオレンジ色の薄明かりが照らし出したその空間には、
木組みの長椅子に備え付けられた、何十もの扇風機の無機質なモーター音だけが響いています。

床には藁が敷き詰められていて、歩く度に柔らかな藁がカサカサという乾いた足音を立て
どことなく暑いような、それでいて涼しいような、不思議な温度がしっとりと肌を包み、
見学している人は皆、その異様な光景に、誰ともなくひっそりと口を閉ざしてしまうのです。





時折、天井に備え付けられた青白い電灯が、いくつもの微細な光の粒を、壁に撒き散らしていました。
オレンジと、白っぽい青の色の対比が、奇妙に目に焼き付きます。





先程の不思議な空間だけで、ついつい足を止めてしまいそうになりますが、
次の道は、校舎の中へと続いています。

体育館から校舎側へと続く、僅かな電球が灯すだけの暗い通路を、先へと進みます。




遠くから差し込む薄明かりの先に見えてきたのは、壁に掛けられた幾つもの額縁。

しかし等間隔に並んだその額縁は、何故か全て黒く塗り潰されているのです。




色のない世界。光と影のモノクローム。
光が眩しければ眩しい程、それによってつくられる影は、より濃さを増すのです。

そのあまりの眩しさは、光に圧力さえ感じる程。




光明の発信源は、ごうごうと音を立てる換気扇。
その向こう側から、光が漏れて来ていたのでした。




今までやって来た廊下を振り返ると、信じられないくらい暗いのです。
差し込む光が明るすぎるせいなのでしょうか。 来た道が、全く見えない……





異質な黒い額縁たちが見下ろす中、上へと階段を登ります。




あの換気扇から差し込む光に近づくにつれて、心臓が脈打つような音が
次第に大きく聴こえてきました。

心音の発信源は、2階の廊下の端にあったこの理科室。


他には光源がなく真っ暗な理科室の中央にある台に、1つの電球が、脈打つ鼓動の音と同時に
紅く激しく点滅を繰り返していました。
それはまるで、生きようと必死に力強く拍動する、心臓そのもの。

中央にある台はちょうど、人1人分ぐらいの大きさなのですよね……





理科室を背に、廊下を反対側へと進むと、また別のオブジェが見えてきました。






うず高く積み上げられた、何脚もの椅子と机。
それらには何故か、白いシーツが被せてあるのでした。

ちらちらとゆらめくあの青白い光が、走馬灯のように、ここでも垣間見られます。

重なり合った椅子の山は、もうひとつ。 こちらは、内側からオレンジの光に灯されています。




その先にあったのは、シーツが張られただけの、なにもない静かな机。




更に、階段をひとつ上がり、階上へと向かいます。





広がっていたのは、蛍光灯が無機質な色彩を灯しだす、大小様々な大きさの透明なケース。
教室2、3個分にまたがって、この透明なケースが均等に並んでいました。

これは…… まるで……





一番最後の部屋にあったのは、まるでアーカイブのような空間。

今までの他の部屋に比べて明るいですが、あの黒い額縁の中身だけ、色々な形で飾ってありました。
それがまた、何とも言えない異様な雰囲気を放っています。

でも、ここの部屋はこれでおしまいではないようです。




隙間から行きついたのは、屋根裏部屋のような場所。
この人1人ぐらいしか入れない隙間が、妙に落ち着くような。


にしても、最後に行きついたこの場所、この格子の整然と並んだ様子……





ざわめく胸を撫でながら、急いで階段を駆け下ります。
なんだか、見てはいけないものを見てしまった感。


一緒に出掛けた友人は、怖くて一番上まで見れなかったそうです。



なるほどね。





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