荒んだ空気に燻った火薬の匂いの混じった、烈しい風が吹きつける、古の合戦場。

そこに佇んでいたのは、蒲公英本丸・第2部隊の6振りの刀。


「偵察、敵の布陣は!?」

「どうやら、雁行陣のようだぞ」

「了解! じゃあ、こっちは対抗して方陣組むよ! 皆、体勢整えて!」

「相手方には、槍や大太刀も控えているかも知れないかな」

「そうしたら、短刀だと分が悪いかな…… 乱に薬研、念の為こっちに下がって!」


部隊の皆に冷静に指示を出しているのは、荒々しい風に、黒い髪と洋風の軍服の裾を靡かせ、 戦場に似合わない高いヒールを履いた、一振りの刀。


「行くぜ! オラァ!!」


彼の掛け声と共に、雄叫びを上げて各々が敵に斬りかかる。

加州清光は今や、第2部隊の部隊長として、勇ましく活躍していたのだった。





「皆お疲れさまー。どう、怪我はない?」


時間遡行軍との戦闘を終え、いつものように加州清光は部隊の皆の無事を確認する。


「ボクは大丈夫だよ!
 加州さんが敵の配置を事前に教えてくれたおかげで、酷い怪我を受けずに済んだよ」


部隊員の1人、乱藤四郎がピースサインを掲げる。


「加州の旦那は随分目が利くもんだな。
 偵察が苦手って言ってた割には、俺たちよりよっぽど得意なんじゃないか? 頼りになるぜ」


敵が殲滅したのを確認してから、具足を解きながら、薬研藤四郎は笑ってそう話す。
乱藤四郎も、薬研藤四郎も、加州より先に顕現しているが、指示にはしっかり従って戦ってくれる、 頼りになる古参の短刀たちだ。


「燭台切も、大丈夫? まだ戦闘には慣れないから、疲れるでしょ?」

「有難う、加州君。おかげで傷も負ってないし、まだ全然いけるよ」


この日組んでいたのは、加州清光と同じ日に顕現した仲間、太刀の燭台切光忠だ。
蒲公英本丸には、まだ太刀の刀剣男士が少なく、少しでも戦力になって貰う為に、 この第2部隊で鍛える事となったのだ。
加州清光の面倒見の良さは、新しい刀剣男士たちを育てる際に大いに役立っていた。



「カッカッカ! 今ではお主が、育てる立場となったか! 感慨深いものだ!」

「もう、山伏、あんまりからかわないでよー。気負っちゃうじゃん」


あれから第2部隊で共に戦ってきた山伏国広は、加州清光の成長っぷりを見て嬉しそうに言う。
少し照れ臭そうに振り向く加州清光の後ろで、ぼそりと呟く声があった。


「流石だな…… 写しの俺など、どんなに頑張った所で、誰の助けにもならん……」


そこの一角だけ重苦しい空気にしていたのは、山姥切国広だった。


「俺よりここに早く来てて、俺より練度が高い奴が、何言ってるの?!
 俺だって皆に負けないようにして頑張って、今ここなの!
 そうやって卑屈にしている暇があったら、いつもみたいにもくもくと頑張りなよ!
 そうじゃないと、俺がすぐに追い越しちゃうからね!」

「カッカッカ! 加州殿のいう通りであるぞ、兄弟!
 何事も、日々之修行! 立ち止まっている暇など、無いのである!」


どよどよと負のオーラを振りまいている山姥切国広の横で、加州清光は声を荒げた。
自分より先に本丸に来ているという事もあり、初期刀枠の他の4振りには殊更強く当たっていた。
そんな2振りの様子を見て、山伏国広は口を大きく開けて大笑いする。





あれから加州清光は、第2部隊に配属されてめきめきと頭角を顕し、その働きをもって 部隊長に抜擢されてからは、ますます本領を発揮していた。


戦いを終えて本丸に戻ると、主と近侍の元へと報告へ向かう。


「おかえりなさい! お怪我はありませんでしたか?」


第2部隊の帰還に、主である蒲公英の審神者の少女が、真っ先に駆けつけた。


「ただいま〜、主。 大丈夫、皆無事に戻って来たよ」


主の少女の声を聴いた瞬間、加州清光は満面の笑みで嬉しそうに報告する。

楽しそうな2人の様子に、後ろで控えていた歌仙兼定は、一瞬、少し冴えない顔色を見せたかと思うと、 すぐに表情を取り繕い、加州清光に報告を求めた。


「それで、成果はどうだったかい?」

「バッチリ。皆も無事だし、ちゃんとボスもやっつけたよ」

「それは素晴らしい成果だね。疲れただろう、少し休んでくれ。今、丁度葛切りを作った所だよ」

「ホント?!やったー! 皆の所に持って行くね!」


抱っこしていた主を離すと、加州清光は、差し出された盆の上に乗った6つの葛切り餅を受け取り、 今しがた戦ってきた面子にいそいそと持って行くのだった。

そんな彼の後ろ姿を眺めて、蒲公英の少女は歌仙兼定に話しかけた。


「加州さん、近頃すっかり部隊長が板について、いきいきしてますね。
 成長もすごく早くて、私もびっくりしています。」

「ん?! あぁ、そうだね、成長が早いのは本丸にとって、実に喜ばしい事だよ……」


主の呼びかけにしどろもどろで返事をした歌仙兼定は、内心焦りでいっぱいだった。
この所、日々新しい刀を迎え、近侍としての仕事に明け暮れ、あまり出陣や遠征に出向いていなかったため、 最近めきめきと成長している加州清光に、練度が追いつかれそうだったのだ。


「(僕も、負けずに、鍛錬しなくては……)」


そう思い、稽古場へ足を運ぼうとした際、後ろから無邪気な声に呼び止められる。


「歌仙ー!! おやつまだかー?! おやつ、おやつ!!」

「すみません歌仙さん、包丁がお腹空いたと申しておりまして……」


先日鍛刀されたばかりの包丁藤四郎が、無邪気な眼差しで今日のおやつをねだる。
自由奔放な彼に、同じ兄弟刀の前田藤四郎が、ぺこりと頭を下げながら一緒についてきた。

鍛刀されたばかりである為か、身体をつくる為に旺盛な食欲で、歌仙兼定の着物の裾を引っ張る。
小さな子を、そのままないがしろにするわけにはいかない。


「あぁ、待ってておくれ、君たちの分も今すぐ持ってくるよ……」


お腹を空かせた子たちの為に、作り置きの葛切り餅を取りに、歌仙兼定はぱたぱたと急ぎ足で厨に向かうのだった。








そんな本丸での生活が続いていた、ある日の事。


こんのすけが、時の政府からの依頼を携えて、蒲公英本丸の皆に呼び掛けた。


「調査任務……ですか?」


「はい。時の政府からの依頼です。

 江戸時代、享保の大飢饉とコレラの流行による死者の弔いと悪疫退散を願って始まった、墨田川の花火大会。 そこに、時間遡行軍による攻撃が確認されました。
 その調査と、時間遡行軍の討伐を、各本丸の審神者たちに依頼したいそうです」


「墨田川の花火大会は、現代までも長く続いている、人々の祈りの象徴。
 俺も刀の時分に見た事がある。それは見事な花火だよね……」


墨田川の花火を思い出しながら、懐かしそうに蜂須賀虎徹が呟く。


「江戸の方々が困っているのでしたら、見過ごすわけには参りません」

「あぁ。そんな人々の尊い祈りを壊すという、遡行軍の邪な行い、是非僕たちで打ち砕きたいものだよ」


敢然とした面持ちで蒲公英の少女が応えると、歌仙兼定もそれに続く。
その返答に、ゆっくりとこんのすけは頷いた。


「調査に協力して頂けるという事ですね……承知致しました、時の政府に打診します。

 ただ、敵の強さは、今の所全くの未知数です。
 どの本丸にも通達されているため、恐らくそれ程の難易度ではないとは思いますが……
 それ相応の準備をしていかれた方が、宜しいと思います」


「時の政府の依頼にも、難易度があるの?」

「はい。時の政府は、数多の審神者を管理しております。
 勿論、練度はそれぞれ異なっております故、歴史の根幹に関わる可能性のあるより難しい任務である程、 熟練の審神者と刀剣男士たちが居る本丸に依頼します。
 それを管理するのも、それぞれの本丸に振り分けられた、管狐であるわたくしの仕事なのですよ」

「なるほどな……時の政府もよく考えて管理してるっつー訳だ。
 まぁ、時間遡行軍の戦力はとてつもない規模だって聞くからな……無駄に戦力も割けないって事か」


堀川国広の質問へこんのすけがそう答えると、和泉守兼定は腕組みをして考え込み、納得する。


「でも、敵の状況も全く分からない所に出陣するのは、よく考えなきゃだね……」

「はい。まだ調査も始まったばかりで、赴いた方々の報告もあまり届いておりません。
 どうぞ、十分用心してくださいませ。」


状況が全く掴めないという事に、堀川国広は考え込む。


「参考までに、他の本丸がどういう編成で挑んでいるか、話を聞く事は出来るか?」

「他の本丸も、練度はピンキリですからねえ……
 まぁ、大体はまずその本丸の主戦力で挑むのが定石でしょうか」


和泉守兼定の質問に、こんのすけは尻尾を丸めて考え込む。


「うちの本丸の主戦力は?」

「練度で言えば、第1部隊で鍛えている方々が、順当だと思います」

「それでは、うちは第1部隊を派遣する形でいいかな?」


そう歌仙兼定が呼びかけると、こんのすけがさらに注意を呼び掛ける。


「ですが、くれぐれもご注意くださいね。
 いきなり実力の違い過ぎる相手と対峙する事になり、折られた刀剣男士の話もよく耳にしますので」


こんのすけがそう告げた瞬間、歌仙兼定の隣に座っていた蒲公英の少女の顔色が、さぁっと俄かに青くなる。

その様子を、加州清光は見逃さなかった。



そして、誰も何も言わない中、黙って手を挙げたのだ。



「……俺、先見部隊に立候補する」


「な、清光?!」


幼馴染の申し出に、随分驚いて大和守安定は問い質した。


「俺だって、練度は大分第1部隊に近づいているでしょ? ずっと第2部隊を率いてきたんだから。
 だから、今回は俺が行くよ」

「そうじゃなくって、ここでなんでいきなり立候補する訳?!」


大和守安定がゆさゆさと相棒を揺らして問いかけている間、加州清光の視線は、ずっと歌仙兼定の方を捉えていた。
一方の歌仙兼定は、加州清光の申し出に酷く驚き、ともすれば、やや狼狽えているようにも見えた。
しかしそんな様子を見せまいと、きっと表情を強張らせて、加州清光に問いかけた。


「こんのすけの話を聞いていたのかい? 今回の戦場は、勝手がまだ分からないんだ。
 成長途中の君を、危ない目に合わせるわけにはいかない。ここは僕が出向こう」

「アンタこそ大丈夫? 最近あまり戦場にも赴いていないみたいだし」

「それは素直に僕への心配と受け止めていいのかな? ……もし挑発だとしたら、受けて立つが」


まるで煽るようなその加州清光の物言いに、ますます歌仙兼定は表情が険しくなる。

まるで電撃が迸りそうな程の2人の視線が、空中で一瞬かち合った。



穏やかな蒲公英本丸では珍しいそのやり取りに、あわあわと狼狽える者もいれば、興味深そうに眺める者もいた。


「あわわ……加州さん、そんな強気な事言っちゃって大丈夫ですか……?」

「へぇ、彼、結構言うねぇ」

「肝心なところで自分の意見を言える胆力っていうのは、悪くないな」


事の成り行きを心配そうに見守る鯰尾藤四郎の一方、にっかり青江と薬研藤四郎は感心して見ていた。



「清光、張り合う心算なら、時と場合を考えなって!」

「そうですよ、今から謝れば、まだ間に合いますって!」


後ろから袖をぐいぐい引っ張る大和守安定と鯰尾藤四郎に構うことなく、加州清光は止まることなく意見を言い続けた。


「いーや。言わせて貰うよ。主の為にも、今回は俺が出陣する!」

「僕を見くびるな……ずっと誰にも負けないよう、鍛錬し続けてきたんだ……!」

「歌仙! 加州も、落ち着くんだ!」

「お2人とも、落ち着いてください……! あるじさまが怖がっています……!!」


歯止めが利かない程加熱していく2人を、必死に蜂須賀虎徹と五虎退が止めた。


五虎退の言葉に、震えだしそうな程怖がっている蒲公英の少女に気付いて、歌仙兼定ははっとする。


「すまない、主……つい、取り乱してしまったよ……」


そう言い、主である少女に話しかけようとするが、蒲公英の少女は歌仙兼定を避ける様に顔を背ける。

そしてその様子を見て、加州清光は大きく息をついた。



「歌仙、気付いてた?
 
 主、ずっと怖がっているんだよ。
 こんのすけが今回の戦場で刀剣破壊の可能性を示してから、ずっとね。
 そしてその恐れが、アンタに向けられていることもね」

「え……」


意表を突く問いかけに、歌仙兼定は暫し押し黙ってしまう。
皆が見守る中、もうひとつため息をついて、加州清光は淡々と話していく。


「勿論、俺だって主の一番になりたい。それは、ここにいる刀剣男士たち皆が思っている。
 だって、俺達は付喪神。持ち主に大事にされたいって、思うものじゃないか。
 だから鍛錬し続けて、より強くなっていこうって思うんじゃん」

「清光の場合は、それが強すぎる気がしなくもないけどね」

「安定は黙って!」


大和守安定の突っ込みに加州清光は反論しながら、先を続けていく。


「……でもね、主の一番は他の誰でもない、アンタなんだよ、歌仙。
 主はね、アンタが折られることを、何より恐れているんだよ」


その言葉に、蒲公英の少女は伏していた顔をようやく上げた。



本丸の刀剣男士たちは皆、かつて主を護る為に、歌仙兼定が折れる直前まで戦った状況を知らない。
そして、その事に、主である蒲公英の少女が、酷く傷ついている事も。

しかし、本丸に居る刀剣男士たちは、蒲公英の少女が刀剣男士たちの事を殊更大事に扱い、 決して無理な行軍はさせない事もまた、皆分かっていた。
そこに、どういった意図があるのかも。

戦いに勝つ事よりも、刀剣男士たちを、決して折らせたくなかったのだ。





そして加州清光は主を振り返ると、寂しそうに笑うのだった。


「主にとっての初期刀は、アンタ1人だけなんだよ。

 ここでアンタが勇み出て、万が一折れちゃったら、誰が主を護るの?
 初期刀はね、主の心の拠り所なんだよ。簡単に折らせちゃダメなんだからね?

 俺は、アンタの立場にはなれない。だけど、主を護るアンタの代わりに戦う事なら出来る。
 だから、今回の任務、俺に行かせて欲しいんだ」



加州清光の本音を聴いた蒲公英の少女は、思わず涙をぽろぽろ溢す。


「加州さん……!

 私にとって、貴方も大事な一振りです……!!
 そんな自分を犠牲にするような言い方は、やめてください…!!」


そう言うと、加州清光の元にやってくると蹲り、ぐすぐすと泣き始めてしまったのだ。


思いもよらなかった主の行動に、加州清光が困惑していると、周りにいた他の刀剣男士たちが声をかけた。


「ふふ、折角良い事言ったのに、女の子を泣かせちゃうのは、格好良くないね」

「もー、あるじさん泣かせちゃ、ダメだよ!」

「え、えぇぇ……?! 泣かせるつもりなんか、無かったんだけどなぁ……」


燭台切光忠や乱藤四郎らの指摘に、加州清光はすっかり参ってしまう。

そしてそんな加州清光を、後ろから大和守安定が思い切りぶん殴り、鯰尾藤四郎がハグしてきた。


「全く、誤解を生むような言い方はやめて欲しいよね! 冷や冷やしたじゃん!!」

「ホントですよ〜!
 心配だからって、最初からそう言えばいいのに、素直じゃないですね〜!」

「べっ 別に、そういうのじゃないから!!
 ただ、同じ初期刀枠として、情けないなって思っただけで……!!」


緊張の糸が切れたように、加州清光の周りは一瞬にして賑やかになり、彼は飛びついてきた2人にもみくちゃにされる。




一方、歌仙兼定は、ただ加州清光が張り合っていたと思ってばかりいた自分を恥じ、仲間想いな彼の真心に、 正面から彼を見る事が出来ず、俯き続けていた。



すると、そんな様子を見つめていた宗三左文字が、おかしそうに笑った。


「くすくす、今回は、どちらを出向かせた方がいいのか、誰の目にも明らかですね?」


そこに、ようやく口を開いた歌仙兼定は、ふるふると震えて、随分と真っ赤になっていた。


「僕が折れる前提で話を進めるのは、やめて貰えないかな……!?
 確かに、最近はあまり鍛錬出来ていないけれど、今まで積み重ねてきた成果が……」

「おだまりなさい。貴方を思う仲間の気持ちを、無下にするものではありませんよ?
 今回の貴方の任務は、主の傍で、皆の戦いぶりを共に見守る事。いいですね?」


必死に何か言おうとしているところに、宗三左文字は容赦なくぴしゃりと釘を打った。

その勢いには、流石の歌仙兼定も押し黙る他なかった。


「……主を安心させるのも、大事な役目です。
 そしてそれは貴方にしか出来ない役目なんですよ、歌仙。

 誰よりも強い事が、本当の強さじゃない。僕はそう思いますけどね」


ふっと笑って、宗三左文字はそう呟いた。






押し黙ってしまった初期刀の代わりに、次に本丸を率いてきた打刀の蜂須賀虎徹が、仲間たちに呼び掛ける。


「では、改めて。誰をこの任務に派遣するのか、もう一度皆で相談しよう。
 先程の加州のように、立候補の強い希望があれば、申し出てみても構わないよ。
 練度や刀種などに応じて、任務を遂行するのに相応しいかどうか、皆で検討していこう」

「まぁ、いつも同じ面々ばかりだと、何かあった時に広く対処出来ないからね……
 初めて挑む戦場にも、予備戦力で慣らしておくのは、大事だと思うよ」


隣で小夜左文字も静かに呟いた。



「それじゃ、僕、立候補していいかな?
 同じ時期に本丸にやって来たよしみとして、加州君をサポートしたいな」


そう答えたのは、脇差としては本丸にやってきたばかりのにっかり青江だ。

どこか掴めない雰囲気で、本丸でも誰とどう過ごしているのか分からない彼だが、 どこでいつ鍛えたのか、確実にその腕を上げていた。


「ちょうど、堀川君と鯰尾君も、最近疲れているみたいだからね……」


にっかり青江はそう言うと、脇差仲間の方を気遣うようにして見やる。

働き者故に、本丸でのさまざまな雑務をこなしてきていた堀川国広と、 増えた仲間たちの為に、畑を連日耕し続けていた鯰尾藤四郎。
律儀で一生懸命故に、自分から休む事が出来ず、2人は知らず知らずのうちに疲れを溜め続けてしまっていたようだ。
どうやら、それを見抜いての立候補だったらしい。


「それに、追悼の花火って聞くし。何か悪いものが出てきたら斬ってあげるよ」

「え、おばけ、出るんですか?!」

「あのなぁ……怖がらしてるんじゃねーよ」

「そういう君も、初めての怖さに震えているよね? 膝の話だよ?」

「う、うるっせぇな!!」

「貴方も付喪神、視点を変えて見れば、おばけみたいなものでしょうに」


そうにっかり青江が茶化すと、五虎退はすっかり怯えてしまう。
和泉守兼定がにっかり青江を叱りつけるが、当の本人も声が若干震えていた事に、宗三左文字がため息をつく。



「あの、僕は今回、遠慮します。あるじさまと一緒に、お留守番してます。
 お、おばけが怖いから、じゃ、ないですよ……?」

五虎退はそう言うと、蜂須賀虎徹は彼の頭を撫でた。

「うん、構わないよ。寧ろ、本丸に長く居る君が、主と歌仙の傍にいてくれると、俺達も安心できる」

「は、はい……! あの、お役目、頑張ります……!」

「うっ…… 何、この健気さ……尊い……!!」

「良い子過ぎて、泣けてくるよね……」

ぱぁぁ……と嬉しそうに瞳を輝かせる五虎退に、加州清光と大和守安定は、思わず胸元をぎゅっと掴む。



「じゃあ、俺も立候補するぜ。予備戦力って言えば、短刀の予備戦力だって必要だろう?
 古参程じゃないが、邪魔にはならん。連れてってくれ」

「薬研が行くなら、ボクも行く!」

にっかり青江の次に名乗り出たのは、薬研藤四郎。
すると、同じ時期に本丸にやって来た乱藤四郎も、それに続く。


「しかしよ、皆があまり戦場に慣れていない連中ばかりじゃ、ちょっと心配じゃねえか?」

「それもそうだね……じゃあ、俺が一緒に行こう。
 顕現してから、幾分か皆より多く戦場は経験しているし。何より、江戸の街なら少しは案内できそうだ。
 出来る限り皆を支援するよ」


和泉守兼定の呼び掛けに、江戸の街を良く知る蜂須賀虎徹が名乗りを上げた。


「僕も手伝うよ。敵を葬る事は任せて」

「あーっ! 祭りならオレも行きてぇ!」


続いて小夜左文字と愛染国俊が挙手するが、蜂須賀虎徹は2人をよく見比べてから、やや遠慮がちに答えた。


「済まない愛染、今回は小夜を推してもいいかな?
 より慎重さが求められる任務だからね」

「それは同感だな。お前の落ち着きのなさでは、索敵で敵に見破られかねん」

「ちえー…… 長谷部さんまでー……」


「その間、代わりに俺と手合わせするか?」

「おっ! するする! 出向けない分強くなってやるぜー!!」


少し困ったように笑う蜂須賀虎徹に、へし切長谷部が同調する。

そこに山姥切国広が手合わせを提案すると、愛染国俊は目をきらきらさせて飛びつく。





「それでは、今回の任務への、我が本丸の派遣部隊は。

 加州清光、にっかり青江、薬研藤四郎、乱藤四郎、蜂須賀虎徹、小夜左文字。
 以上6振りの皆さまで宜しいですね?」


こんのすけが問いかけると、皆一斉に頷いたのだった。




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