その日、大勢の異端者たちが処刑される筈だった処刑場に佇んでいるのは、1人の修道士だった。
重く立ち込めた暗雲の空の下、処刑台の前で、荘厳な雰囲気の司祭…ファレノプシスが、罪状を恭しく読み上げる。
「この罪人・エリスは、教会の教えを人々に広めねばならない修道士の身の上でありながら、
国の豊穣を奪い、衰退に導く異端者たちを扇動し、反乱を起こした罪深き者である。
陽と光と木の精霊の聖名において、その命を大地に還さんとする。」
茨の棘で縛られたエリスは、棘に手足を傷つけられて血を滴らせながら、静かに目を閉じて処刑台の前に佇む。
処刑場には大勢の観衆が詰めかけ、来たるべき処刑のその瞬間を見守っていた。
「異端者たちを逃がしたらしいぞ」
「へぇ! 国を衰退に導くつもりかね……それはなんと恐ろしい女だ……」
彼女を畏怖する声があちこちから聞こえる一方、小声ながらも、処刑を疑問視する声も上がっていた。
「……異端審問って、ほんとうに必要な事なのかい……? 処刑までなんて、ひどすぎやしないか?」
「自分だけじゃなくって、家族や知り合いも急に連れていかれる事だってあるんだろ……
生きているだけで罪だなんて、そりゃいくらなんでもあんまりだよ」
「しっ! そんな事を言ってる事のが教会の人たちにばれたら、首をはねられちまうよ……!」
「……どうやら、国民の中にも、異端審問を疑問視する者はいるようだな」
衆人に紛れながら、ルドベキアは静かに呟いた。
気付かれないように、騎士の鎧ではなく一般服を身に着けていた為、装備は心許ないが、
教会の修道士たちに気付かれないように要所に人員を配置し、その時を待った。
「最後に何か、申し開きをすることはあるか……?」
司祭が促すと、エリスはゆっくりとその眼を開く。
槍を突きつけられながらも、静かに壇上から観衆を見渡す。
ぼろぼろな身なりではあったが、彼女の眼差しは、強い光を湛えていた。
切れて血の滲んだ唇から、人々に向かって、エリスは思いを訴える。
「……皆さん。この国は、実り豊かな幸せな国となりました。
しかし、その幸せは一体誰が運んでくるのでしょう。
この国に豊かさをもたらすのは、異端者たちの命と引き換えなのです。
異端者たちは、ただ異端者属性を持つという理由だけで、ある日突然、生きる権利を奪われます。
その悲しみ、絶望感……それは、耐えがたいものでしょう。
もし自分がそうだったら……そして家族や友人がそうだったら。
愛する者たちから突然引き裂かれる苦痛を、想像してみて下さい。
その上で、異端審問というものを受け入れることの残酷さを、想像して下さい。
私たちは、彼らの犠牲の上に、恵みを享受しているという事を、今一度考えてみて欲しいのです。
人々の苦しみの上に生きている、その事こそが、私たちの罪なのではないでしょうか」
エリスは、まっすぐ人々の心に問いかけた。
観衆たちは、彼女の問いかけに、ざわざわと動揺し始める。その波は、次第に広がっていく。
「この……黙れ!! 早くこの罪人を黙らせなさい!!
刑を執行するのです!!」
人々の動揺に焦ったのか、ファレノプシスは処刑執行者に、彼女を処刑台に押さえ込むように指示する。
「今だ!!」
合図と共に、処刑台に複数の刺客が躍り出る。
1人が鮮やかな手捌きで、処刑人の剣をはねのけ、1人は縛られていたエリスを執行人から引き離した。
ぼろ布で顔を隠していたが、その間から見せる瞳の色は、エリスには見覚えがあった。
「貴方は、あの時の……?!」
若者は唇に人差し指を当て、素性を言わないようにエリスに示す。
「お助けに参りましたよ」
もう1人が、処刑台の上から執行人を突き飛ばす。彼は壇上から観衆の中に見事に転がり落ち、無様に目を回した。
突然の事で、ファレノプシスは動揺し、真っ赤になってじたばたしながら喚き散らす。
「反乱、これは教会に対する、立派な反乱ですよ!!
ええい、護衛たちは何をしているのです!! 聖花騎士隊は!! 我が修道士たちは!!」
「もう恐怖政治は終わらせようぜ。教会のでっぷりさん。」
あちこちから異端者たちが現れ、修道士たちを相手に戦い始める。
戦いに不慣れな教会の修道士たちは、彼らに押され、苦戦を強いられる。
聖花騎士隊の護衛たちは、民衆たちや異端者たちを抑えるのに手いっぱいの様子だ。
「エリスおねえちゃん……!!」
ルドベキアから茨の枷を外してもらったエリスに、ケントが涙ぐんで駆けつける。
その腕の中に、思いっきり飛び込んだ。
「まぁ、ケント……貴方も、私を助けに来てくれたのですか……?」
「だって、ぼくを助けてくれたんだもの。お姉ちゃんも助からなくちゃイヤだよ……」
「ありがとう……助けに来てくれて、本当に嬉しいですよ」
彼の柔らかい髪をなで、傷だらけではありながら、エリスは精いっぱい微笑んでケントに礼を述べた。
広場が騒然とする中、異端者の1人が壇上に上がり、観衆に訴えた。
「みんな! もう分かってるんだろう、異端者排除が、本当は正しくないってことをよ。
あんなの、いわれもない罪をなすりつけているだけだ!
冬の寒さを耐える方が、家族や友達を失うより何倍もマシなんだって、気付くんだ!!」
その言葉に、観衆の心は大いに動かされていた。
その時。
訴えていた異端者の胸板を、1本の矢が貫いた。
「な……?!」
何が起こったかも分からず、その若者は、血を吹いて地面に倒れこんだ。
若者を貫いた矢からは葉が生い茂り、すぐに1本の若木になる。
後ろを振り向くと、ファレノプシスに付き従っていた、あの痩せた修道士が
目つきの鋭い修道士たちを従えて、杖を構えていたのだった。
「戯言を……飢餓をもたらす冬は永遠に、このフロレアールから排除すべきなのです。
そして、冬を呼び込む異端者は、生きているだけで罪なのです!!
私共が、代わりに刑を執行致します。逃げられると思わないように。
喜ぶべきでしょう……貴方たちの躯は、この苗床としてフロレアールに実りを約束するのだから!!」
そう言うと、その修道士の合図と共に、彼らは一斉に木の魔法を繰り出した。
彼らから放たれた苗は一瞬にして鋭い矢の形となり、無情に異端者たちを貫いていく。
そして、異端者だけでなくすぐ傍にいた民間人にも、その矢は無差別に浴びせられる。
「やめろ……罪もない民に、手を出すな!!」
修道士の前に、白銀の髪の青年が立ちはだかる。
その手には、彼の誇りともいうべき、陽の光に煌めく12枚の花を模った剣が握られていた。
「その剣……貴方は、聖花騎士隊の者ですね? 鎧はつけてなくても、分かります。
そうですか、聖花騎士隊は、やはり我が教会にも立てつきますか……どこまでも邪魔な人たちだ」
「聖花騎士隊は関係ない。これは、俺自身の意志でやっている事だ。
お前たちのやっている事は、非道な事だ……。 たとえ国王陛下が許しても、俺は許さない!!」
「一介の兵士が、偉そうな口を叩かないで頂きたい。その前に、貴方は私の相手になるのかな?!」
修道士が繰り出したいくつもの苗床の矢を、見切って剣で弾いていく。
すると、その苗床は奇妙な変化を見せた。いくつもの枝を芽吹かせ、彼に巻き付き縛り上げた。
ぎりぎりと締め上げる蔓に、剣を取り落してしまう。
「なっ……!」
「私の植物魔法をなめないで頂きたい。これでも、ファレノプシス様の護衛を務める身。
そんじょそこらの修道士の魔法とは訳が違いますよ」
痩せた身体に似つかわしくなく、強力な魔法を操る修道士は、邪な笑みを浮かべて、次の一撃に狙いを定める。
鋭い切っ先を持つ木の矢が、縛られて動けない彼を貫こうとした。
しかし、それを目の前で阻んだのは。
「エリス!!」
木の矢が貫いたのは、白い髪の華奢な乙女だった。
身動きの取れないジェノを庇おうと、咄嗟に前に出たのだった。
「おねえちゃん!!」
「な、なんてことを……!! 貴方をお助けしようと参上したというのに……!!」
傍にいたケントとルドベキアは絶句してしまう。
口元から血が流れながらも、エリスは静かに微笑んだ。
「いいのです……貴方たちはまだ死ぬべきではない。
ここで果ててしまったら、どなたがフロレアールに安息の日々を取り戻せるのでしょう……?
見ず知らずの私を助けて下さった貴方たちなら、きっと……」
言葉が途切れると、エリスの手は力なくぱたりと地面に落ちる。
「エリス……エリス!!」
「おねえちゃん!! やだよ……嘘だよ……こんなの……」
ケントやルドベキアがいくら呼んでも、血の気の失われたその両の眼は、開かれる事はなかった。
その身を貫いた矢は、やがて一本の白い花を咲かせた。
山の頂に生える、エーデルワイスだ。躯に生える悲しげなその姿は、それでも凛とした光を放っていた。
「おやおや……自ら飛び込んでしまうとは愚かな……これは処刑の手間が省けました。
こんな者を庇ったとは、愚かな犬死にですね。
ご安心なさい、すぐに貴方たちも全員後を追わせてあげますよ。
この異端者を庇護する、魔性の者の次にね!」
修道士は彼女の最期を見届けると、壇上に残った3人に吐き捨てるように言った。
そこには、慈悲の心の欠片はまるでなかった。
すると、場の空気が変わる。
凍てついた、冷たい空気が流れてくる。
「冷たい……冷たい風が吹いてくる……」
その風を起こしているのは、剣を提げたまま固まっている、白銀の青年の周囲からだった。
青年の身体を縛り上げていた蔓は、白い霜で覆われていた。
まとわりつこうとするその動きは次第に鈍くなり、最後には凍り付いて砕け散った。
それだけでは済まされず、周囲の空気はどんどん冷やされていく。
立ち込めた暗雲から、ちらちらと白い結晶がいくつも舞い降りてきた。
それは、フロレアールから失われて久しいものだった。
「雪だ!!」
「なんという事だ、フロレアールにまた冬が舞い戻ってきたぞ……!!
作物が枯れる、人々が飢えてしまう悲劇の始まりだ……!!」
人々は民衆も修道士も司祭も皆、恐れおののき、空から降ってくる雪に、その身を縮みこませた。
「この冷たさ……雪……まさか! ジェノ、お前は……!!」
ルドベキアは、現れた突然の事実に驚愕し、狼狽する。
今まで、騎士隊の誰もが全く気付かなかった。
静かな怒りを湛えてる目の前の青年は、氷の魔力を秘めていたのだ。
「これは面白い……貴方も異端者だったのですね。ならばその命、この国の為に遠慮なく頂戴しましょう!」
しかし、それ以上に驚いていたのは、ジェノ自身だった。
「俺が……異端者……?!」
突然の事実を認識出来ず、ただただ自身の両の手を見つめ、茫然と立ち尽くしていた。
すると、修道士は一段と大きな声を張り上げて、民衆に呼び掛ける。
「皆さん! ごらんください!! この異端の者たちは、冬を呼び込み、フロレアールを貶めようとしている!
その証拠がこの雪です!! これは冬のはじまり。いずれ多くの草木や人々の命を奪うでしょう!!
邪悪な芽は早く摘まねば!! 武器をその手にとり、この者たちの息の根を、今ここで止め置くのです!!」
その呼びかけに、雪で恐怖におびえた民衆たちは、鍬や鋤、あるいは木の棒など、転がっているものを手にして
残っていた異端者たちを撲殺し始めた。その姿は、狂気そのものだった。
辺りが騒然とする暴動の中、ルドベキア、ジェノ、ケントの3人は、エリスの傍から動けずにいた。
茫然自失とする3人を、修道士は息の根を止めようと、毒々しい紫色の蔓を何本も束ねて、棘だらけの黒々とした矢を作りだす。
その矢が今まさに放たれようとした、その時。
急に幾重もの蔦がどこからともなく地面から生え、修道士の手足や矢を縛り、動きを一瞬抑えた。
「今だ、逃げるんだよ、アンタたち!!」
その声にはっとして、3人は駆けだし、人込みの中に消えていく。
残されたエリスの遺骸を振り返ると、白い花がいくつも咲き始めていた。
冷たい風が吹き雪が降るその最中も、決して枯れる事は無く、白い花はエリスを護るようにどんどん咲き続ける。
「待ちなさい!! この異端者どもめ!!」
絡みついてきた蔦を引きちぎり、修道士がその姿を確認しようとした時には、既に3人は人込みの中に消えてしまっていた。
「……まぁ良いでしょう…… この大罪人の処刑は完了しましたし。
異端者たちの反乱も、民衆の恐怖によってかき消されていくことでしょう……」
修道士は、民衆たちによって異端者が粛清されていく様子を眺めて、満足そうな笑みを浮かべた。
日が暮れる頃、教会から大分離れた、古くて使われなくなった小屋。
そこに、逃げ延びてきたルドベキアとジェノ、そしてもう2人の姿があった。
「結局……結局、エリス殿を助ける事は出来なかった事はおろか、異端者たちまでも見殺しにしてしまった……
彼女が命をかけて助けたケント少年も、この騒動の中、見失ってしまった……」
ルドベキアは拳を握りしめる。 己の非力さを振り返る度、拳の震えが止まらなかった。
「過ぎたことさ……あれだけの喧騒の中、命があっただけでも感謝するんだね」
青紫色の長い髪をした女性が、その様子を見下ろしながら、冷たく言い放つ。
「失礼だが……貴方は何者だ……?」
ルドベキアが尋ねると、その女性は少し面倒そうに答えた。
「私はヴェロニカっていうんだ。修道士のはしくれだよ。
……と言っても、あんなことしちゃ、もう教会には戻れないがね……」
「教会内でも異端審問を快く思わない人物が居ると彼女は言っていたが、貴方たちの事だったのか。
あの修道士を止めてくれたのは、貴方の魔法だな…… 命を助けて頂いて、礼を申し上げる。」
寂しそうにヴェロニカは笑って、エリスを助けようとした2人に軽く頭を下げる。
「私は、エリスの友人だったんだよ…… こっちこそ、あの子を助けようとしてくれて、ありがとうね……」
ジェノはというと、茫然自失といった様子で、暮れ行く夕焼け空をぼうっと眺めていた。
「まさか、お前が異端者だったとはな……」
「……今、ここで、俺を処刑しますか……?」
「今更な愚問だな…… あれは計算外だった……」
半ば自棄になって自虐的に問いかけるジェノに、首を振ってルドベキアは否定する。
「俺が異端者だったことで、民衆を怯えさせてしまい、あの修道士たちによる虐殺に口実を与えてしまった……」
ジェノは俯き、手にした剣をじっと見つめる。
「あの時、少しは希望が見えたと思ったんだ……
異端者の必死の呼びかけに、人々は気付きかけていた。 異端審問で、家族や友人を失う辛さに。
けれど、目にした氷の力はそれをも消し去ってしまう……
それほどまでに人々は、飢えの苦しみをもたらす異端属性を恐れているんだ……
まぁ当然か……異端者は生きている人間の僅か一部、だけど冬の飢餓は全員容赦なく降りかかる災厄だからな……
生まれながらにして、為す術もなく罪人か……
はは、昨日異端者が言っていた通りだな。同じ立場になって、ようやく彼らの気持ちが痛いほど分かるよ……」
すると、もう1人の修道士が口を開く。
「全てにおいて、時期が早すぎたのです。
教会は人々の心に、冬の恐ろしい一面だけを、長い時間をかけて刷り込んだ。それは、簡単に拭い去れないでしょう」
「貴方は、もしかして、司祭のマグノリア殿……?」
品の良い白髪混じりの女性の面影に、はっとしてルドベキアが問いかけると、少し寂しそうに笑って彼女は答えた。
「えぇ、仰る通りよ。尤も、今は司祭の役目を降ろされてしまいましたがね。」
「降ろされた……?」
「異端審問を推し進める司祭のファレノプシスの一派が、反対するマグノリア様は司祭としてはふさわしくないと、
司祭間で結託し、不信任決議を提出したって訳さ。」
ヴェロニカが苦々しく、彼の質問に答えた。今でもその決定に、至極不満を抱かせながら。
「つまり、今後も異端審問は推し進められていく、そういう事か……
この苦しみが、今後も続いてしまうのか……」
再び、拳を握りしめ、ルドベキアは怒りを露わにする。
すると、それまで沈んだ表情で口を閉ざしていたマグノリアが、3人に語り掛ける。
「人々の目を覚ますには、異端審問で一定の属性を弾圧しなくても、自然の中で生きていける……
異端審問なんかに頼らなくたって、生きていける……それを分かって貰う事だと、私は思うのです。」
マグノリアの提案は、異端審問のある現状しか知らない彼らにとっては、まるで理想論のように聞こえた。
「エリス殿もかつて、そのように話していた。
……しかし、異端審問が始まる前は、この国は冷たい季節風に苦しめられていたのだろう……?
現に、過去に多くの犠牲者が出たと聞く。
教会により、陽と光と木の魔法を重用する事と、氷と闇を追放することで、この国の実りが増えた事も
過去の事実として証明されている。
それを覆すのは、そう簡単な事ではないのではないか?」
ルドベキアがフロレアールの現状を並べて疑問視する。
「もちろん今のように生活は豊かではなかったけれど、異端審問のような恐怖で互いの首を絞め合うくらいならば
私は、国民は努力すべきだと思うの。
ただ、それに気づくのが、私は遅すぎました……気付いた時にはもう、教会の与える恵みに人々は慣れてしまっていた。
年を取り過ぎて発言権もなく、教会をついに追い出されてしまいました。
……これは、私が償うべき罪です……」
マグノリアは後悔の念の重さに、深く項垂れる。
「もう既に、手遅れかも知れないですね……。教会は、王政をも手中に収める事を目論んでいます。
国民の殆どが異端審問を正当化して考えてしまっているし、国王も教会の考え方に傾倒してしまっています。
今回の反乱が抑えられてしまった今、もう、誰もこの国を変える事は出来ないのでしょうか……」
「……いや、まだ終わりじゃない」
そんなマグノリアの嘆きを、ルドベキアは静かに否定する。
「国王を御守りするのが、我ら聖花騎士隊の務め。 我らは、まだこうして生きているし、騎士隊も健全だ。
教会が王家を乗っ取り操ろうとするならば、それを食い止めるのが、我々の使命だ。
異端審問が間違っているならば、それをなんとかして糺すべきだ。
……今後、このような悲劇を二度と繰り返さないように……そして、異端者の処刑を、少しでも減らせるようにな。」
「アンタ、あの時、司祭のファレノプシスと、一緒についていたあの修道士……アマランサスに、顔を見られたんだろ。
騎士隊は異端者たちを捕らえて、護送する任務を与えられている筈。反逆罪で訴えられないかい?
そっちの若い子は、おまけに氷の守護を持った異端者なんだろ。奴らが黙っちゃいないよ」
厳しい現状を、冷静にヴェロニカが指摘すると、ルドベキアはこんな状況だというのに、少し笑ったのだった。
「いや、顔と剣の紋章を見られたのはジェノだけだ。私は布で顔を隠していた為、彼らにはばれていないだろう。
しかしあの場に居た事は事実だし、彼らはきっとそれは把握している。
汚名を着せられる可能性は十分にあるな。
が、なんとかしてみせよう。 ……こう見えても、弁論は得意なほうなのでね」
「一体全体、どうやって……?」
その自信がどこからやってくるのか全く検討もつかず、ヴェロニカはただ不安な面持ちで、首を傾げるばかりだった。
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