人工精霊使いの開発が進むと、精霊使いの力を手に入れた兵士が増えてくる。
帝国軍はそれらの兵士を集め、既存の天然精霊使いたちと併せて“精霊使い部隊”という特殊部隊を作った。
新たに手にした精霊魔法の強い力をコントロールするため、兵士たちはこの部隊での訓練を開始したのだった。
リツもこの部隊に配属され、人工精霊使いたちと共に訓練をするようになったのだった。
ある日、兵士たちが訓練していた時の事であった。
「おいお前、こんなちゃっちい力でよく精霊使いなんて名乗れるな? このそばかすだらけの出来損ないが!」
とある若い兵士が、目の前の兵士の1人に辛辣な言葉を浴びせかけていた。
罵声を浴びさせられたその兵士は、まだ15,6そこいらのいたいけな少女だった。
人工的に精霊を付加された精霊使いは、その能力にかなりの差があった。
それは本人のもともとの素質であったり、精霊による能力の差だったり、原因は様々だ。
その少女は風の精霊を付加されたが、彼女自身か精霊の問題なのか、あるいは相性の問題か、
弱い魔力しか出せず、周りからは彼女の付加精霊と共に、出来損ない扱いされていた。
「やめて! 虐めないで……ちゃんと訓練するから……」
「お前みたいな出来損ないなんて、何万年訓練しようと屑のまんまなんだよ!」
人工精霊使いに志願し、強力な力を手に入れられた兵士は、その力の強さのあまり傲慢になってしまう例も少なくない。
実際、発狂や死のリスクもある過酷な実験に志願したものは、密かにその心に下剋上の野心を持つ者が多かった。
同じ訓練をする人工精霊使い同士でも、いかに強い力を得て、相手より高い地位に上るかをかけて争い続ける。
仲間なんていう優しい感情はなく、ライバル心を互いにむき出し合う、帝国兵所以の光景がいつも見られていた。
悲鳴を上げて泣き続ける少女に向かって、罵声を浴びせた兵士は容赦なく蹴り続ける。
既に涙も出し尽くしたのか、憔悴しきった少女に制裁の手を緩めることなく、挙句の果てにおさげを引っ張り上げた。
いつもならば素通りするリツも、あまりの光景の悲惨さに見るに耐えかね、やめさせようと
2人の元に近づこうとした、その時だった。
「おい、やめろよ! それ以上その子に手を上げるんじゃねーよ!」
1人の紅い髪の兵士が、2人の間に割って入った。
「女の子に手を出すなんて最低だぞ! それでもお前男かよ!!」
「うるせぇ、邪魔すんな! このカッコつけヤローが!!
こんな能無しブスなんか、これくらいの扱いで丁度いいんだよ!!」
尚も少女を蹴ろうとする兵士に、いつの間に居たのか、もう1人蒼い髪の兵士が蹴ろうとしたその足に槍を突きつけていた。
「帝国軍軍紀・第7条第12項。 同等の階級における兵士同士は、互いに命令する義務を持たない。
更に、第3条第1項。帝国軍内での殺傷は、いかなる理由をおいても禁止とし、加害者は極刑とする。
……これ以上続けると、同じ部隊の兵士が暴行の末に死んでしまうリスクも考慮しなきゃいけねぇな?
将校でもないのに、出しゃばってんじゃねぇぞ」
鋭い眼差しと迫力のある低い声で、少女を甚振っていた兵士を睨みつける。
「くそっ、偽善ぶってんじゃねーよ! 今にお前らの力なんか追い越して、見返してやるぜ!」
すると、その兵士はようやく掴んでいたおさげを放し、捨て台詞を残してその場を立ち去って行った。
残された少女は、しゃっくりあげて泣き続ける。
そんな少女に、紅い髪の兵士はそっと肩に上着をかける。
「大丈夫か? ヴィッキー」
「あたし……あたしなんか、どうせ精霊魔法もろくに使えない落ちこぼれよ……
もうイヤ……こんなとこで過ごすのなんか……こんな無理やり与えられた力なんか要らないわ……!!」
自ら人工精霊使いの実験に参加した者もいれば、彼女のように軍から命令されて
強制的に精霊を付加された人工精霊使いも存在していた。
帝国が管理する孤児院で育てられた、親元も分からない子供たちは、その身分をいいことに
国の為という名目を着せられ、軍に徴集されて有無をいわさず実験に駆り出される。
みなしごの子供たちに、選択の余地はなかった。
「パイヴィッキ、お前は精神侵食を受けてないし、優しい心のまんまじゃねーか。
力ばっかり求める野蛮なあいつなんかより十分立派だぜ。
スーデルだって無口で大人しい精霊だけど、きっとそのうち実力を発揮してくれるさ」
「マーキス兄さん……ありがとう……」
紅い髪の兵士の慰めに、少女の兵士は袖で涙を拭って、ようやくその涙を留めた。
「しかし、あいつ……レオニードな、ヴィッキーにやけに絡んでくるじゃないか」
「見下したい相手を探しているんだろ。
精霊と親和性がまだ不十分なパイヴィッキを目の敵にしているんだ。
ここに来る奴らはそういう奴が多い。
……だが、あいつもきっと不憫な過去を歩んできた、可哀そうな奴なんだろうよ。
酷い仕打ちを受けていた奴程、相手を力関係でしか見れなくなり、より高い位置から見下そうって思いが強くなるもんだ。
そういう奴程、思いがけない力を手に入れた時、気持ちのストッパーが外れやすいんだよ」
蒼い髪の兵士の分析は、とても冷静で客観的だ。
彼のコメントを聞きつつも、紅い髪の兵士はため息をついてぼやく。
「そうかも知れねーけどよ。ウォルター、あいつの行動はエスカレートしすぎだぜ。
他の人工精霊使いたちが、酷い目にあってるのは見てらんねーよ」
「あいつの精神侵食はそんなに酷くないみたいなんだがな。
目に余るようならば、上司に報告するのもありだが……」
「あの万年バニラ頭にか?」
「冗談を言え。あんなバニラ将軍なんか、くその役に立たねぇよ。」
「くっく、だよなあ。そりゃ違いねーよな」
そう冗談を飛ばし、2人は互いに顔を見合って笑いを堪えた。
そんな3人を、少し離れた所からリツがじっと見つめていると、そのうちの1人がリツの視線に気付く。
「ん? あんた……噂の天然精霊使いさんじゃねーか? 名前はえーと…?」
「リツだ。 お前たちか、人工精霊使いというのは」
リツが名乗り出ると、紅い髪の兵士は屈託なく笑い、手を差し出して握手する。
「そうさ。俺はマーキス。こっちの青い髪はウォルターってんだ。よろしくな。
俺たちもまだ精霊使いになって日が浅い。それまでは技術研究部で裏方やってたからな。
魔法も戦いもからきしわかんねー。まぁ良くしてやってくれよ、先輩サン」
一方、パイヴィッキと呼ばれた少女は、リツの姿を見るなり、表情に恐怖の色を浮かべて竦み上がっていた。
「あの人が、青い炎の使い手……」
「大丈夫だってヴィッキー、こいつ、噂程そんな怖そうに見えねーぞ?
思ってたより若いし。もしかして、俺たちよか年下かな……?」
「見た目で判断するな。何年も実戦経験を積んできた、れっきとした戦闘兵だぞ。
お前はいつだって危機感というか、警戒心がねぇんだからよ……」
自分より背の小さいリツの頭を、思わず撫でそうになりながら驚くマーキスを、ウォルターが呆れて窘める。
すると、突然マーキスが何かを思いついたように叫ぶ。
「炎の使い手……!
おい、リツと言ったか、あんたちょっと暇してるか?」
「あ、あぁ……特別今は用事はないが……」
突然言われてたじろぐリツの手を、マーキスはためらいなく引っ張る。
「そうか! じゃあ、悪いけど俺たちと一緒に来てくれよ。訓練も終わったから、今は自由時間だろ?
ヴィッキーも折角だから来いよ! きっと見ていて損はないと思うぜ!」
彼に言われるがまま、訳が分からないリツは他の2人と共に引っ張られていった。
マーキスに連れられて3人が辿り着いたのは、森の奥に佇む一軒の木造の建物だった。
ここに吹く風は他の場所と異なりとても穏やかで、まるで森に差し込む陽だまりのような、暖かさと優しさに包まれていた。
荒涼とした帝国の中で、これだけ緑と光に溢れている場所を見て、リツはとても驚いたのだった。
「また花が増えたなぁ。マロンが植えたのかな? おーい、ユーリおじさん!」
呼び鈴を鳴らし、木の扉を叩いて、マーキスが中の住人を呼ぶ。
すると、その名の人物が出てくる前に、扉の奥から子供たちが、何人も堰を切ったようにわっと出てきた。
その様子にパイヴィッキとリツは思わず、目をぱちくりする。
しかしそんな2人もすぐ子供たちの波に押し流された。
「おかえりー! マーキスにいちゃん! ウォルターにいちゃん!」
「おう! 皆元気にしてたかー?」
駆け寄る子供たち1人1人の頭を撫でながら、マーキスは嬉しそうに答えた。
「あれれー? おんなのこといっしょだ! わーい、かのじょだーかのじょ!!」
「残念だがそれは違うぞ……」
「えー違うのー?」
子供たちの興味津々な眼差しはパイヴィッキに移る。
無邪気な子供たちの推測を、ウォルターが半ば苦笑しながら否定する。
その間にも、子供たちは背丈の高いウォルターに肩車をせがんでいた。
あまりのリクエストに、しぶしぶ子供たちを2、3人交代で抱え上げると、子供たちはきゃっきゃと嬉しそうにはしゃいだ。
そうしている間にも、何人かの女の子が少しおずおずしながら興味の眼差しでパイヴィッキに問いかける。
「おねえちゃん、はじめまして!」
「かわいいおさげね! じぶんでゆってるの?」
「ここ、もしかして孤児院なの?」
驚いてパイヴィッキが尋ねると、マーキスは首を縦に振って頷いた。
「そうさ。俺たちの育った孤児院さ」
「こんなに自由奔放なところもあるのね……
でも、どうしてここにあたしたちを連れてきたの?」
パイヴィッキの質問に答える前に、穏やかな風貌の壮年の男性……
ここの孤児院の主が、子供たちに囲まれてやってきた。
「ここにやってくるなんて驚いたよ。
2人共久しぶりだね……無茶はしていないかい? 軍の訓練は過酷だからね。
精霊使い部隊に配属が変わってからは、変わりはないかな?」
「有難う、ユーリおじさん。見ての通りピンピンさ。」
「それで、今日は一体急にどうしたんだい?」
ユーリが尋ねると、マーキスは戸惑っているリツを彼の目の前に立たせた。
「こちらの彼は?」
「リツって言うんだ。火の力を使える精霊使いだよ。
暖炉と調理場のかまどの調子が悪くて困っていただろ? こいつが役に立つと思ってね。」
得意げになってマーキスが答えると、後ろからウォルターが呆れて突っ込む。
「あのなぁ、お前、それが目的かよ……精霊使いは便利屋じゃねぇんだぞ……」
「と言う訳で、リツ、暖炉と調理場の調子を見てやってくれねーか。
火の力を持ってるお前だったら、あそこにいる精霊の事、何かわかんねーかなと思って」
「あ、あぁ……分かった……」
リツは急な事を振られて戸惑っていたが、きらきらと自分を見つめてくる子供たちの眼差しに耐えかねて
思わず2つ返事をしたのだった。
孤児院の奥にある調理場に案内されたリツは、使い古され年季の入ったかまどの前にやってくる。
確かにそこには、かまどを護っていると思われる精霊がいた。その表情には、やや不満が見て取れる。
かまどを暫く見回して、リツはかまどの内側が煤でびっしりな事に気が付いた。
これでは、火を燃やす時に、精霊たちが十分に空気を取り込めず、うまく燃やす事が出来ない。
「分かったぞ。ここの精霊はこのかまどが煤だらけな事に不満を持っているようだ。」
リツがそう言うと、かまどの精霊は重々しく頷いた。
「はーん、そういう事を言いたかったのか。こいつ寡黙でさ。あんまり話してくれないんだよな。
気難しい顔して上を見上げるだけでさ。サンキュー!」
かまどの精霊が伝えたい事が伝わると、マーキスとウォルターは早速ブラシやら掃除道具を持ってきて
煙突の中を掃除し始めた。
「へぇ……精霊って、こうしてコミュニケーションをとるものなんだ……」
パイヴィッキも感心して、そのやりとりを眺めていた。
「急に精霊が見えるようになっても、どう接していいか分からないもんなー。
誰も教えてくれる訳でもないしな。
でも、最初は戦いの為だけにしかこの力の事考えてなかったけど、こういう事も出来るんだってさ。
案外精霊って近くにいて、何かしら関わってるって、分かったんだよ。こうして、助けてもらう事もな。
……ほら、大分綺麗になったぞ」
かまどの掃除を終えると、精霊は満足そうな顔をして頷く。
火を起こすと、それまで燻っていた炎とは打って変わり、暖かい色の炎がパチパチと楽しげに上がった。
暖かいかまどの火を囲むと、4人の精霊使いたちは自然に無言になる。
いつの間にか、パイヴィッキの隣には、彼女に付加された風の精霊、スーデルの影が傍にそっとついていた。
火と風は親和性が高い。火を燃やす為に、新鮮な空気を彼女が運んできてくれていたのだ。
「あ、スーデル…… いつもは、私の言う事を聞かなくって、暴れてるのに……」
その様子に気付いて、パイヴィッキはとても驚いた。
「軍の訓練だと、こんなゆったりとした時間はとれなくて、俺たちは如何に精霊を従えさせて
魔法を使うかって事ばかりしか考えてねぇからよ。そりゃー精霊側も怒るわな、はは。
俺だって同じ立場だったら怒るだろうさ。都合いい事ばっか言ってんじゃねぇ、ってな」
そう言って笑うウォルターに、スーデルもこくこく頷いて、まるで同調しているように見えた。
「な、ヴィッキー。 戦って相手を倒す事ばっかりが全てじゃねーんだ。
……ま、こんな事、軍の上層部には言えねーけどな。
こんな事は、精霊使いの能力を手に入れた、俺たちにしか分からない事さ。」
「そうね……こうして精霊を見ることが出来て、お話が出来るって、考えてみればとても不思議ね……」
パイヴィッキはそう呟いて微笑む。少し元気を取り戻したようだ。
「こうして考えると、この力も悪いもんじゃねーよな」
「そうだな……武力しか見ない軍部の奴らからしてみれば、理解しがたい能力だろうがな」
3人の人工精霊使いたちは、互いに顔を合わせてしみじみと語る。
人工精霊使いは、従えさせた精霊を付加する事によって強力な魔力を手に入れるが、
同時に、その姿を見て声を聴くという、コミュニケーションが取れる能力も得る事が出来た。
帝国軍内では、その能力はもっぱら精霊に命令するためばかりにしか重点が置かれなかったが、
意思疎通が出来る事によって得られる事は今回の事のように、きっとある筈だ。
戦いの為だけでない。何か役に立つ為の力が。
しかし、カーディレット帝国軍は、精霊魔法の高い攻撃力しか見ていない。
実際の所リツも、捕虜の身でありながらこの国で生き残る事が出来て、軍の中で一目置かれるようになったのは、
精霊使いとしての高い攻撃能力を買われているからだ。
更に、人工精霊使いとは、その攻撃能力の為だけに、リスクのある実験を行って作り出されている。
まるで兵器のように、精霊使いの能力をとってつける。
目の前の3人の人工精霊使いは、そんな非道の現実の上に存在していた。
穏やかに燃える炎の前に佇むリツは、3人に問いかけた。
「人工精霊使いは、軍の命令によって強制的に精霊使いにされたと聞く。
お前たちもそうなのか?」
真剣に尋ねるリツの表情を見て、頭をぽりぽり掻いてマーキスが答える。
「あー…… まぁ、そういう奴が多いよ。ヴィッキーは孤児院住まいだから国の命令で仕方なく、な。
でもそういう奴ばかりじゃないさ。レオニードは自分で実験に名乗りを上げたらしいし、俺たちもそうさ」
「自分の意志で、実験に?」
驚くリツに、ウォルターが答える。
「俺たちにはな、護りたい奴がいたんだよ。だけど、力不足で何もできなかった……
そんな時に、この精霊使いの実験の話が出たんだ。勿論危険も承知さ。
この帝国じゃ、実力がなければ何も出来ない。先へ進めない。
だが、力さえ持てば、ただ従うだけだった、流されるだけだった未来も変えられる。
そう思って、俺たちはこの実験に志願したんだ。」
人工精霊使いの実験は、強制的にさせられているものばかりだと思っていた。
それまでの天然の精霊使いたちも、強制的に連れてこられて、兵士として従軍させられた過去があるからだ。
しかし彼らは自身の意志で、この過酷な実験に名乗りを上げた。
そこには、人に強制されない、明確な彼らの目的があった。
ウォルターの言葉に、リツはふと思い出した言葉があった。
自分の力で、いつか自由を掴み取りなさい
「力があれば、先へ進める、か……
……俺は、精霊使いとして軍に従う事しか知らずに生きてきた。そんな俺でも、こんな未来を変えられるんだろうか……?」
「あんたは、帝国の兵士として強制的に育てられてきたんだろう?
そういう意味じゃ、俺たちより選択肢がなく、自由じゃなかったと思う。
だけど、あんたには力がある。俺たちみたいな取って付けた紛い物の力じゃなくって、もともと備え持った強い力がな。
その力さえあれば、自分の未来を選び掴み取る事だっていつか出来るんじゃないか?」
「この力は従軍して相手を傷つける力じゃなくって、未来を望む自分自身を護る力なんだ……そう思わなきゃ、やってられないさ」
2人が話しているのを聞いていたパイヴィッキも、膝を抱えてぽつりと呟く。
「……あたし、訓練頑張る。 人を傷つける戦いは勿論イヤだけど……
弱いまま翻弄されるのはもっとイヤよ。それに、あたしにも大事な友達がいるもの……」
「そっか……そうだよな……」
パイヴィッキの決意を、マーキスは黙って聞いていた。彼の表情は、どこか切なそうだった。
すると、ウォルターがそっと聞こえないようにリツに耳打ちする。
「……あいつが人工精霊使いの実験を受けた時、あいつの幼馴染も同時に実験を受けさせられたんだよ。
パイヴィッキは精霊の力が弱い代わりに、あんまり精神侵食を受けなかったんだが、
もう1人の友人……ヴィーゼっていう女の子はな、凶悪な精霊を付加され、精神侵食で自我と記憶を失っちまったんだ。
人工精霊使いの実験は、そういう危険なリスクもあるんだよ。
俺たちみたいに覚悟がついてる奴ぁいいんだが、そうでないのが、強制的に従えさせられる孤児や捕虜ってわけだ」
軍の上層部のやり方を心底軽蔑するように、ウォルターは過酷な孤児や捕虜たちの処遇を説明する。
リツも、この国に連れてこられた戦争捕虜だ。
力のない者は、権力者たちに翻弄され、従って生きるしかない現実しか、そこにはなかった。
それでも彼らは、自分たちの生きる術を求めて、懸命に己の在り方を模索している。
未来を掴むには、力をつけて、前へ進むしかない
悲しいまでの、この国の厳しい現実を、リツは突きつけられたのだった。
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