鬱蒼と生い茂る密林、遠くを見渡せば岩肌がむき出しになった険しい山々が幾つも聳え立っている。

朝霧に包まれた、目の前に広がる未開の大地は、兵士たちに畏怖の念を抱かせるのに十分だった。


「うわぁ……すっごい森……これ、簡単には俺ら手出せないんじゃないか?」

「木々が細かく枝を張っている。上空からは良いが、森林の内部を飛ぶのは困難そうだな……

 テワランの兵士たちは恐らく密林の中に潜んでいる。上空から狙うには、手段が限られるな。」


カーディレット帝国軍・騎竜部隊の若い兵士、ゲオルグとエンヴィーは

目の前の密林をひとしきり眺めて、侵攻の困難さを間近で感じとる。



「問題ないわ! その為に私たちが居るのでしょう! こんな森ごとき、簡単に焼き払って差し上げるわ!」


自信たっぷりに、鮮やかな青いドレスとマントを翻し、煌びやかな宝玉のついた豪奢な杖を振りかざして言い切ったのは

ソルシエール王国・魔導師部隊の1人、ミーナだった。

豊満な肉体を惜しげもなく曝け出す、身体のラインがぴっちりと出るそのセクシーなドレスに

1ダース並んだカーディレット帝国の兵士たちは、揃ってほぉぉ……とため息をついた。


「ふーん、そんなに簡単に大風呂敷広げちゃって良いのかしらぁ? あとで大したことないって、恥ずかしい思いしても知らないんだから」


ミーナを鼻で笑うのは、同じくソルシエールの魔導師・アンジェリカだ。こちらもミーナに負けじ劣らじの美貌の持ち主だ。

幾重にも巻かれた豊かな金髪、ふわふわの羽毛のファーを肩に掛け、ゴージャスな雰囲気を醸し出している。



「何ですって?! アンタこそ私の足引っ張らないでよね!!」

「何よ、やる気?!」


キーキー言う美女2人の間に割って入るのは、魔導師を護る騎兵隊の青年・ヴァーツラフだ。

いつものように気楽でのんびりした口調で彼女らを止めに入る。


「まぁまぁ、ミーナもテタも、仲良くやろうよ〜。一緒に協力する仲なんだしさ」


テタ……? と、アンジェリカが名乗ったものと異なる名前に、カーディレットの兵士たちが首を傾げる間もなく、

彼女の杖がヴァーツラフの脳天にゴスッと鈍い音を立ててヒットする。


「その名前を呼ぶなっつーの!!」

「え〜? テタはテタなのにぃ」


全く悪びれる様子もなく、ヴァーツラフは脳天に直撃を喰らいながらも、尚も笑っていた。




そんな若い兵士たちのやりとりを見て、ソルシエール王国・魔法騎士隊の隊長、ヤロスラフはため息をついた。


「申し訳ない……若い者たちは初陣で浮足立っているみたいだ。お恥ずかしいところを……」

「いやいや、構わないですよ。誰だって緒戦は気が大きくなりがちですから。

 うちのも、そちらのレディーにうつつを抜かしておりますので、おあいこでしょう。」


大きな機械を組み込んだ絡繰式銃剣を背中に抱え、カーディレット部隊の機械部隊の長・ローレンツは笑って受け流した。


彼が振り返ると、魔導師の美女たちを見てはしゃぐ帝国男子たちの姿が映っていた。

呆れた事に、ナンパをしている兵士もちらほら見かけられる。



「ヒュー! こんなかわい子ちゃんたちと共同戦線張れるだなんて幸せじゃん! ねぇ君名前なんていうの?ねぇねぇ?」


おどおどした青い制服の魔法騎士隊の少女に詰め寄る、帝国兵・ヒューイを、同じ部隊の隊員のアクセルが止めに入る。


「やめろよ、可哀想に。この子、怯えきってるじゃねーかよ」

「ちぇーっ。堅苦しいヤツ。かわい子ちゃん。あとでまたお話しよーねー!」

「はいはい、お前の仕事はこっちこっち!」


ヒューイはずるずるとアクセルに引っ張られて、本来の仕事をするように促される。



連れて行かれた先には、帝国が所有する竜の一種・ワイバーンが何匹か待機していた。

獰猛な目つきで、鎖に繋がれているのがお気に召さない様子で、時折その口から灼熱の炎を噴き出していた。


ワイバーンは本来1〜2名程度しか騎乗できない。しかも、かなりの訓練をうけた兵士でないと、彼らを手懐ける事は困難だ。




今回、テワラン天帝国を侵攻するにあたり、カーディレット帝国とソルシエール王国は共同戦線を張った。


機動力に長けた、カーディレットのワイバーン有する騎竜部隊と、それにソルシエールの強力な魔導師がタッグを組み

広範囲に渡り魔法攻撃を仕掛けようという作戦だ。

機械部隊も補助として派遣され、慣れないソルシエールの兵士たちが乗りやすいように、ワイバーンに騎乗する為の器具を取り付けたり

空中戦に強くなるように、思い思いの形で装甲の強化を図っていたりした。




「イェーイ! 折角だからめっちゃくちゃカッコ良くカスタマイズしておいたぜー! 感謝しろよなー!」

ヒューイはどうやら改造魔のようだ。あちこちデコラティブに装飾されたワイバーンが、一際兵士たちの注目を浴びた。

ごついボルトやナットの付いた、ハードな装甲が施されたワイバーンに、乗り手が叫ぶ。


「うわーッ 俺のワイバーンがぁぁぁ!!?」


愛竜がワイルドパンクに改造されて、悲鳴を上げるカーディレットの騎竜兵士。

そのワイバーンも、改造中に火を噴かないようにと口に金具が取り付けられていたが、どうやらゴテゴテに着飾られてご不満のようだ。


一方、そのカスタマイズがいたくお気に召した兵士もいたようだ。


「なんだこれ、めっちゃかっこいいー!! すげぇ強そう!! 簡単に墜とされなさそうだ!!」

「だろだろ!? やっぱ話が分かる奴ぁ、目の付け所が違うねー!

 騎竜っつーたら、真っ先に翼が狙われる。そうならないように、翼に強化パーツを付けといたぜ!

 ちょっと機動力は落ちるけどなー。まぁ真っ直ぐに飛べば問題ないって!」


感激して目をキラキラさせている騎竜部隊の兵士・ニールに、ヒューイはドライバーを回して得意げに説明する。


「あのなぁ……程々にしておけよ……俺らが命令されたのは、安全に乗れるように2人分の鞍を取り付ける命令だろ……」

「まー折角ならばよりカッコよくて強い方がいーじゃーん」


あまりの改造に呆れるアクセル。彼は堅実な装備を騎竜に施していた。

しかしヒューイは反省の色さえ浮かべずに、自分の改造を満足そうに見上げていた。



「ちょっと、こんなに色々取り付けて、重量制限は大丈夫なの?!

 私たちが乗ってもスピードは落ちないんでしょうね!?」


不安げに言うアンジェリカに、ヒューイは軽く答える。


「大丈夫、だいじょーぶ、ワイバーンは思った以上に力があるからね! かわい子ちゃんの体重がもう1人分増えたって屁でもないって」


「ちょ!! 大丈夫よ!! 私ならばダイエットしてるから!! 失礼な奴ね!!」


体重の事を言及されて憤慨するアンジェリカ。





そんな風にどたばたしていた兵士たちに、騎竜部隊を統括する将軍・イグナートが一喝する。


「騎竜部隊、全員整列!! 」


その迫力溢れる怒号に、それまで好きに喋っていた騎竜部隊の兵士たちは、一斉に己のワイバーンの隣に整列し、敬礼の姿勢をとった。

それに促されるようにして、機械部隊の兵士たちも倣って敬礼の姿勢を取る。ワイバーンですら、大人しく翼をたたんで頭を垂れる。


「お〜、おっかね〜。相変わらずの迫力だぜ……」

「バカ、お前も黙れよ……あの人に目をつけられたら大変だ……」

小声でそう溢すヒューイに、アクセルは黙るように小突いた。



辺りは水を打ったように静まり返る。兵士たちが敬礼の姿勢を取ったのを確認してから、イグナートは彼らの前に進み出る。

隣には機械部隊のローレンツ、その隣にはソルシエールの魔導師部隊の分隊長、そして魔法騎士隊のヤロスラフが並ぶ。



「諸君。我らカーディレット帝国軍は、ソルシエール王国軍と同盟を結成し、テワラン天帝国に向けて

 これから侵攻作戦を展開する!!

 諸君らに前々から通達した通り、今回の作戦は騎竜部隊の兵士と魔導師もしくは魔法騎士兵がペアとなり、

 機動力を活かして森林に潜むテワラン兵を魔法で攻撃し、あぶり出すものとする。


 α、β、γの各隊に分かれ、斥候が先に調査に向かったポイントφに向かって進軍。

 そこをキャンプ地として確保する事を、作戦目標とする!!」


イグナートは簡潔に指示を出す。地図につけられたφの記号。広い森林を抜け、高い山々に向かう、丁度山の麓の地点だ。


「機械部隊は全体的に補助を頼みたい。騎竜の装備に不具合が出たら修理を行い、彼らを援護するんだ。

 必要に応じて火炎放射器、電動カッターなど、機械を用いて道を作れ。

 但し、森林は必要以上に切ってはいけない。あれはテワラン兵士にとっては身を隠す手段だが、俺たちにとっても、良い隠れ蓑になる」


ローレンツも機械部隊の兵士たちに指示を出す。


「魔導師兵や魔法騎士兵は、訓練通り魔法を正確に打ち込め。

 騎兵隊の諸君は歩兵として、機械部隊の兵士たちと共に、地上から進軍せよ!」


ヤロスラフもソルシエールの魔導兵たちに命令を下す。



「勇猛果敢に挑め!!一歩も後れを取るな!! 以上!! 準備にかかれ!!」



イグナートの鋭い怒号が響き渡り、兵士たちは準備に取り掛かり始めた。





しかしここでも小さな紛争が持ち上がる。

どの騎竜兵に、どの魔導師が乗るかで内輪揉めが始まったのだ。



「俺、ナイスバディなアンジェリカちゃんがいいー!!」

「アンタどこ見てんのよ!! 気安く触んないで!!」


「ちょっと、ゲオルグ君、なんか汗臭いわ!! 他誰か居ないの?!」

「えぇぇ……酷い……ちゃんと毎朝シャワーしてるんだけどなぁ……」


「魔女を乗せるのを夢見ていたんだ……何で男子なんだ!!」

「そりゃこっちの台詞だ!! 騎竜部隊に可憐な戦乙女はいないのか!?」


「……煩くなければ、誰でもいい……まともな奴はいないのか……」


誰が誰と組みたいと思い思いの事を口にする兵士たちは、もはや混沌の渦となっていた。



あまりの騒乱に、ついにイグナートが切れた。長槍を振り回して怒涛の叫びをあげる。


「黙れ!! 文句の四の五と言わず、隊列の両隣の者とペアを組め!!」






テワランに攻め込むカーディレット部隊とソルシエールの部隊が絡ませたくなって、書いちゃいました、えへv(えへvじゃない)

書いていく内に、機械部隊が結構具体的に書けた気がする(笑)
装備強化とか、森林の伐採とか、補助とかそういうのに駆り出されそうだなと!

派遣されるソルシエールの部隊は、魔導師部隊・魔法騎士隊・騎兵隊、どれかなのか
それともそれぞれからかいつまんで派遣なのか、まだまだちょっと分からない部分はありますが。
良ければご意見ください(笑)

魔女っ娘らのボンキュッボン!にくぎ付けになる兵士とか、いつぞや以来のキャットファイトとか
カスタマイズという改造に、ペアの組み合わせという名の席替えの騒乱(笑)とか、やー書いててまず私が楽しかった(笑)