落盤事故を受けて、自動人形のキュイはオーウェンの元へ運ばれる筈だった。

しかし、オーウェンの元へキュイを送り出した青年は、一向に戻ってこない。


心配した他の掘削作業員たちが後を追うと、道の途中で気絶している青年を発見したのだった。


「おい!! 大丈夫か!!?」


作業員たちが駆けつけると、青年はようやく気が付き、頭を振りながら起き上がる。


「なぁ、キュイはどこだ? 確か風呂敷に包んで持っていった筈だよな?」

「どこにも見当たらないぞ……?」


確かに一緒に連れて行った筈のキュイの姿がどこにも見当たらず、作業員たちは辺りを見回す。

すると、倒れていた青年が、おぼろげに自分の身に起こった事を話したのだった。


「……襲われたんだ。何者かに。スタンガンの強い電撃を喰らって、気がついたら倒れていた。

 おそらく、はじめからキュイを奪うつもりだったんだろう……

 落盤事故も、きっと仕組まれたものだ。あいつを壊して、修理に運ぼうとする所を狙ったんだ……」


「な、なんだって……?!」


「大変だ、オーウェンさんにこの事を早く知らせなきゃ……!!」


作業員たちは、事の詳細を話すべく、オーウェンの工房に急ぎ走ったのだった。









作業員たちから事情を聴かされたオーウェンとリックスとジュンコは、互いに難しい顔をしていた。


「キュイが……連れ去られたなんて……」


兄妹のように共に育ったリックスは、キュイの行方を心配して居ても立ってもいられない様子だった。

一方オーウェンは、事の成り行きに怒りを顕わにする。


「俺があいつを出し渋ったから、奴ら強硬手段に出やがったんだな……

 もっとちゃんと見ててやるべきだった……くそっ!!」


机をダンと叩き、悔しそうに叫ぶ。


「ここは、侵略を推進しているカーディレット帝国と真正面から対峙している事は皆分かっている。

 そんなお膝元で、こんな物騒な事は起きないって思っていたんだけどねぇ……」


ジュンコも、強硬にキュイを奪われた事に対して、驚きを隠せずにいた。


「あいつは特殊な存在だからな。自らの意思で動く自動人形なんて、そりゃ量産できれば強力な軍事力になっちまう……

 きっと、ガスパールはあいつを調べ、そのノウハウを欲しがる国に売りつける気でいるんだ。」


「そんな!! お父さんの作ったキュイが……戦争の道具にされるなんて……!!」


オーウェンが危惧している事態を聞かされると、リックスは真っ青になって叫ぶ。

これは、彼ら親子が一番恐れている事態だ。



「そんなの、絶対嫌!! ワタシ、探してくる!!」



血相を変え、涙を浮かべて飛び出そうとするリックスを、急いでジュンコが抑え掛かる。



「リックス、落ち着きな!! 今飛び出したところで、そう簡単に見つかるもんじゃないよ!!

 闇のルートを使って、見つからないようにキュイを運び出す心算だよ。

 残念だけど、今のアタシたちにはどうしようもないさ……」


俯いてしまうジュンコに、それまで黙っていたオーウェンが、静かに呟いた。


「……いや、まだ術はあるぞ」


顔を上げる2人に、オーウェンは拳を握りしめて、その瞳に意志を灯らせて、状況を打開する策を必死に模索する。



「コリンドーネの工房組合、商業組合に協力を依頼するんだ。

 キュイに仕込んだ技術はそう簡単に解明できるもんじゃねぇ。

 もしかしたら、あいつを運び込んで分解・解析を匿名で依頼するかもしれないからな。

 先回りして、各地の工房に目を光らせて貰うんだ。

 で、商業組合にも連絡を入れ、売買ルートに網を張って貰えば、もしかしたら見つかる可能性だってゼロじゃねぇ。」


「な、なるほど……!!」


「コリンドーネの職人たちは皆帝国を目の敵にしているからな。事情を話せば協力してくれる筈さ。

 あいつが奪われてからまだ時間はたってない。早く手を打てば、見つかるかもしれねぇ。」


オーウェンの案に、ジュンコは目を見張る。なるほど、彼らの協力を仰げばなんとかなるかもしれない。




すると、オーウェンとジュンコに、ゆっくりリックスが提案する。


「これは、コリンドーネ共和国議会にもかけるべき案件だわ……

 仮にキュイが分解調査され、その技術をもってあのコが軍事用に量産されてしまったりしたら、

 強力な軍備が結成されてしまうもの。

 もし、同じく機械技術に長けたカーディレット帝国の手に渡ったりでもしたら、大変な事よ!!」


「あぁ。コリンドーネ議会のお偉いさん方、ひいては王女サマにも、こりゃ報告しねぇといけないな……」


リックスの提案に、オーウェンも難しい顔をして頷くのだった。









3人は、コリンドーネ共和国議会のあるシルバー・キャッスルにやってきた。


門番をしていた騎兵隊員のセレスは、やんわりと彼らに話しかけた。


「お疲れ様です、リックスさん。あれ、今日は非番じゃなかったでしたっけ?」

「急な用事があるの。お願い、共和国議会、ひいてはシルヴァーナ王女にお会いできないかしら?」

「……分かりました。お急ぎの御様子ですね。お3方、こちらへどうぞ」


彼らの尋常じゃない様子を見て、セレスは静かに頷くと、彼らを案内する。





コリンドーネ共和国議会は、各自治体の代表者、工房組合や商業組合などの各労働組合、

共和国軍の参謀たち、そして国の象徴でもある、コロポックルのシルヴァーナ王女とその側近で成り立っている。


国に危急の事態が起こった時、共和国議会で話し合いの場が設けられ、国の方針を決定する。



今回の事案は、現在カーディレット帝国からの侵攻を防戦しているコリンドーネにとって

この戦いの行方を左右することにもなり兼ねない事態だ。

その為、直接3人は共和国議会へ報告と相談に乗りこんだのだった。




「ここに直接乗り込んでくるとは、リックス、一体どんな案件なのだ?」


議会を構成するうちの1人、コリンドーネ共和国軍・銃兵隊副隊長のアルバトロスは

廊下を歩きながら、落ち着いた様子で彼女に話しかける。

共和国議会に直接話す前に、直属の上司である彼にまずリックスは話したのだった。


「急にやってきて申し訳ありません…… 実は、ワタシの父が開発した技術を巡る一件が、

 今起こっている戦乱に少し影響を与えそうだったので、事情を説明に参りました。」


「戦乱に、影響を? 君の御父上の技術は確かに、コリンドーネにおいては様々な発明をし、国を助けてきた。

 だが流石に、戦線自体に影響を与えるというのは、いささかオーバーではないかな?」


アルバトロスが訝しんでいると、後ろから威勢の良い声が聞こえてきた。


「ほう、戦線に影響を与えるような事態ってのは、随分な話じゃねぇか。俺も是非聞きてぇな。

 まぁなんだ、二度手間になるから、直接皆の前で話せばいいぞ。さぁ、こっちに来い、お3人さんよ」


そう話すのは、銃兵隊隊長であるイーグルだ。

議会の前に事情を説明しようとするリックスたちに、直接議会での説明を投げかける。




イーグルに連れられてやってきた3人は、会議室の白い大きなテーブルに座している国の重鎮たちを前にして、些か緊張が走る。

そこには、国の舵を切る役目を持つ、錚々たる顔ぶれが並んでいた。



「おぅ。今日は久しぶりにいるんだな、メイナード。」


「はい。ようやくカーディレット帝国の連中を国境線から追いやって来ましたよ。

 そうでなければ、我々も休む暇すらありませんからね。」


イーグルが話しかけたのは、騎兵隊の隊長・メイナードだ。

国境の防衛戦線でひっきりなしに軍を率いて戦う彼女が、共和国議会に顔を出せる日はそう滅多にない。

カーディレット帝国の侵攻は、統制の取れた、その上強力な軍備を持つコリンドーネ戦線相手に苦戦し

ここ数日少しその勢いを落としていたのだった。



「しかし、どうやらカーディレット帝国は、隣国であるテワラン天帝国への侵攻の手を強めているようだ」


そう話すのは、銃兵隊所属で、王女付きの参謀であるメルクリウスだ。

国境線の防衛ラインが盤石である代わりに、隣国・テワラン天帝国に向かう帝国の侵攻は激しさを増していたのだった。

それは、偵察飛行で実際にリックスも視認している。



「こちらが放った密偵によると、カーディレット帝国は今まで侵攻していた我が国だけでなく、他の国へも侵攻を開始しているようです。

 先日報告した、カーディレット帝国と、ソルシエール王国、そして更にノアプテ王国の同盟結成の件も、間違いないようです。

 これら3ヶ国が手を組み、まずテワラン天帝国への侵攻に力を入れているのでしょう」


銃兵隊の参謀の1人・アグネスも、密偵からの報告を議会に伝える。



「世界を巻き込む大戦の香りがするな……」


議会の話を聞き、オーウェンは顔をしかめた。




「オーウェン殿、貴殿は、この戦線に影響を与えるような事態を、本日報告にきて頂いたとの事。

 どういう事なのか、我々に説明して頂けないだろうか」


メルクリウスは、早速オーウェンに説明を求めた。

オーウェンはくたくたの作業着のまま、頭をぽりぽりとかきながら皆に説明を始める。



「あー…。 こんな大それた場に出ること自体気が引けるんだがよ。

 どうしても聞いて貰いてぇ事があって、ここに参上した次第だ。

 俺ぁ、昔から自分で動く機械人形ってのを開発していた。で、長年の苦労もあって、そいつは出来たんだ。

 でもな、出来たはいいんだが、最近その噂をどこかから聞きつけて、手にしたがる奴がいたんだよ」


「お前さんの機械人形の出来は、そりゃぁ見事なもんだ。職人一同誇りに思うぜ!」


威勢よくそう話すのは、コリンドーネの工房組合のまとめ役をしている、デュッセルだ。


「ありがとな。だが、自分で好きに動くことの出来る機械ってのは、使い方次第では無尽蔵に動ける兵士にもなっちまう。

 そうすれば、どうなるか、頭のいいお前さん方なら想像できるだろう?」


オーウェンの問いかけに、議会の皆は難しい顔をする。


「それってつまり、好きなだけ命令に従える兵士を作れるって事……ですね?」

「そういう事だ」


アグネスの鋭い質問に、オーウェンは気難しく頷いた。


「で、その技術そのものである、俺が作った機械人形がな、何者かの手で奪われちまったんだ……

 きっと奴ら、あいつを分解して仕組みを調べ、コピーを量産する気でいるぞ。

 どんな命令でも聞く都合の良い兵士を何体も何体も作れちまう。そうなりゃ、でっかい軍隊が出来ちまうわけだ!

 もしもカーディレット帝国なんかの手にでも渡ってみろ。おっかねぇ改悪を施されて、コリンドーネなんか鉄の兵士でひとひねりだ!!」



「それは……大変な事態だわ……」


唇をかみしめて、アグネスは苦々しげに呟く。事の重大さに、テーブルに座した重鎮たちは言葉を飲み込んでしまう。




「それで、奪った人物の憶測は?」


「あぁ。ついている。ガスパールっていう、リトスの商人だ。

 ここんとこ妙にあちこちの工房にやってきていたんだが、胡散臭い野郎でね。

 商売、金の事しかアイツは考えていない。儲けになるようならば、平気で侵略推進国に売り込むだろう。」



「リトスは中立国なんで、あんまり交易を制限していなかったから、どんな輩も忍び込めるって訳だ……

 こりゃ困った! 抜け穴だ!! あぁ、あたいたちの大事な技術や製品が、悪い奴らの手に渡っちまう!!」


テーブルの上でそう早口でぴょこぴょこ叫ぶのは、コロポックル職人組合の代表であるキャロラインだ。


「落ち着けって、キャロラインよぉ。そうならないように、俺たち組合で目を光らせているじゃねぇか。

 俺たちだって国を大事にしてる。敵国に流れそうな怪しい交易はちゃんとチェックしてるさ。

 職人の技術・発明は、俺たちの宝だ。簡単に設計がばれないようにお互い配慮しているし、互いの発明をけなし合う事はしねぇ。

 そういった悪だくみの片棒担ぐ奴は、組合みんなで見つけてしょっぴいているがな。今んところそんな報告はねぇよ。」


このようなやりとりは日常茶飯事のようで、慌てふためくキャロラインを、手慣れた調子でデュッセルが宥める。


「じゃあ、今のところ市場や工房に、キュイ……俺の機械人形が来てるって報告はねぇのか?」

「あぁ。そのようだな。」


オーウェンが尋ねると、デュッセルは市場での様子を彼に伝える。


「だが、分かんないよ。コリンドーネ市場だと手が回るって、もしかしてもう既に外国に運ぶ手筈を整えているかもしれない。

 リトスは、場所に寄っちゃ、あんまり良くない取引をするところもあるからね……

 錬金区は特に、裏ではソルシエールとか、危ない連中とつながってるって噂があるからね」


難しい顔をして、ジュンコはリトス海洋貿易都市連邦での取引事情について皆に伝える。





すると、それまで黙って議会の進行を見守っていたシルヴァーナ王女が、その口を開いた。

勇ましい金属の鎧に包まれたその姿は、わずか親指ほどしか無かったが、その小さな身体には強い意志が宿っていた。



「実情は把握出来た。オーウェン殿の発明した機械人形の技術が、その人形ごと侵攻推進諸国に奪われる可能性があるという事だな。

 そしてそれは、侵攻推進国の軍備として、我々に牙をむく可能性があるという事実。

 国内では、工房や職人組合は目を光らせているが、取引に引っかからず、国外へ流出するリスクがある。

 ……我々は、コリンドーネ共和国は、どうしたらいいと思うか、皆の衆」



今の状況を理路整然と整理し、シルヴァーナは皆に問いかけた。



そこに、まずデュッセルが発言する。


「王女。まず、協力関係にある諸国にこれらの事実を伝え、交易でのチェックを厳しくして貰えるように手配して頂けませんか。

 我が国は、長年の友好国であるワダツミノ国、リトス海洋貿易都市連邦、図書館都市エムロード、トーヤム王国と

 多くの国々と貿易を通じて交流を持っています。

 特にリトスに、その類稀なる技術が流れる可能性が一番あるように思えます。故に、検閲での捜索に力を入れるのです。」


「分かった。諸国に手紙を送り、協力の依頼を手配しよう」


デュッセルの意見に、力強くシルヴァーナは頷く。




そして次に、メイナードが発言する。


「カーディレット帝国の戦線は、日に日に勢いを増しています。

 今まで我が国はなんとか彼らの侵攻を食い止めていますが、諸外国を吸収し、ますます帝国は肥大する一方。

 ソルシエール王国やノアプテ王国と同盟を組めば、ますますその力は増すでしょう……

 更に、斥候の話によると、カーディレット帝国は、人工的に精霊使いの力を生み出し、強力な軍備にしていると」


「人工的に?! そんな事が出来るものか!!

 精霊使いは類稀なる天からの授かりもの。それを作り出すなど、到底ありえぬ……!!」


それまで黙っていた、ドワーフの長・ローエンは、顔を覆う程の白い髭を振り乱して叫んだ。


「しかし、残念ながら、精霊使いでなければ成し得ないような、強力な魔法を戦線で確認しています。

 噂によると、帝国は開発に力を入れ、非道な実験を何人もの捕虜たちに施していると……可能性は、否定できません……」


「おぉ、なんてことだ……帝国とは、なんと罪深き国よ……」


メイナードの報告に、ローエンは頭を抱える。




「精霊使いか…… あんなに追いやっていたのに、全く都合のいい事だぜ…………」


2人のやり取りに、イーグルは拳を握りしめて呟いた。

隣に座っていたアルバトロスが、そんな彼の肩を無言で叩く。

そして、議会に座していた他の重鎮たちに、己の考えを投げかけた。



「侵略を推し進める国々が結束するならば、我々も、志を同じくする国と、共に手を取り合う事が

 今こそ必要なのではありませんか。

 敵対するカーディレット帝国は、戦線上や属国にした場所では、横暴な振る舞いを行っています。

 このまま彼らへの併合を許せば、世界の秩序や平和、私たちの大切にしているものは皆、蹂躙されてしまうでしょう。

 職人たちの誇り、我々の愛するこのコリンドーネの大地、人々の優しさを護る為に、共鳴し合う国と、結束を!」


彼の呼びかけに、他の者たちも共鳴する。


「我が国だけでは、彼らに立ち向かうのは到底難しいでしょう。

 ですが、いくつもの国々で立ち向かえば、きっと侵攻を食い止められる事も出来る筈です!」


同盟の案に、メイナードは賛成する。


「おそらく、長年親交のあるワダツミノ国は、事情を話せばきっと我々の側についてくれるとは思います。

 あちらの精霊信仰を、もしかしたら帝国が目をつけて狙うかもしれません……早々に同盟を組む必要があります。

 リトス海洋貿易都市連邦……は、3つの自治権が複雑に交錯した場所。それぞれの思惑が異なる可能性もありますね。

 エムロード……は、どうかしら? ジュンコ女史?」


早速アグネスは同盟を組んでくれそうな国をリストアップする。更にはエムロード出身の学者であるジュンコにまで意向を尋ねた。


「えっと、アタシはそんな国をかけたやりとりなんか任されてないから、正直分かんないけど……

 でも、帝国とかなんかより、アンタたちに協力したいな、って思うよ。」


いきなり意見を求められたジュンコはしどろもどろながらも、自身の考えを述べる。



「出来れば、今帝国に侵攻を受けている、広大な領土とその武術で名を馳せた

 テワラン天帝国とも同盟を組めたら、心強いのだが……」


「しかし、テワラン天帝国は、自然と共に生きる事をモットーとした国。

 俺たちの機械技術をあまり良く思っていない。

 侵攻を受けている帝国も機械を使って侵攻してるし、竜狩りを行うドラゴンハンターの違法な狩りによって

 酷い痛手を受けてて、機械なんか見たくもねぇって思ってる奴が多いって話を、あっちから来た連中からよく聞くな。」


デュッセルは交易を通じて他の商人たちから聞いた話を皆に伝える。

テワランの人々が、帝国同様、コリンドーネをあまり良く思っていない、という事を。



リックスは不意に、偵察飛行で訪れた際の住民たちの、恐怖に引きつった顔を思い出す。

故郷を焼き払われ、住む場所を奪われ追いやられた人々が抱いた、機械に対する憎しみを。



しかし、そんな人々が、帝国にただ飲み込まれていくのを、リックスは許したくなかった。

今まで赴いた戦線の最中にも見たのだ。

罪のない住人たちが……赤子を背負った母親と、年老いた老夫婦が、無情に焼かれる姿を。

そしてそれを見て高らかに笑い声をあげる、どす黒い髭の将官を。

兵士でもない一般人にも、帝国は一切容赦はしなかった。

そんな事が、これからあちこちで起こると思うと、胸が締め付けられ、怒りがこみ上げてくる。





「……テワランの国を蹂躙する帝国軍は、かの地の美しい森林や山岳を焼き払おうとしています。

 その地に住む、何の罪もない住人達も。そんな事、ワタシたちはただ黙って放っておくなんて出来ません。

 例え向こうから良く思われていなくたって、ただ焼き尽くされていく人々を、放っておくことなんか、ワタシは……!!」



言葉を詰まらせるリックスに、シルヴァーナ王女は席を立ち、彼女の傍に駆け寄る。

そして彼女の前に立ち、凛とした面持ちで彼女に言う。



「勿論だ!! 其方の涙、無下にはしまい!

 其方は防衛戦線で戦ってくれ、偵察飛行に赴き、傷つく隣国の住人達を目の当たりにしてきたのだな……?

 その苦しさ、辛さ、もどかしい思いは、如何程だったことか。済まない……そんな思いをさせてきてしまって。

 戦線に赴き我が国を護ってくれている兵士たち、技術を磨き国を発展させてくれている職人、1人1人の思いを、私は大切にしたい!!

 もちろん、隣国の危機を見過ごすことだって出来などしない。 私たちにできる事を、共に探そう!!」


涙を目にいっぱい浮かべるリックスを前にして、シルヴァーナは高らかに叫んだ。


「我がコリンドーネ共和国は、横暴を尽くすカーディレット帝国とその同盟国に対して、異を唱え続けよう!

 ほんとうに大切な者たちを護る為に!!

 そして、共に手を取り合うべく、周りの国々へ呼び掛けていこう!!」



シルヴァーナの呼びかけに、議会に座していた面々は、お互いに顔を見合わせ、強く頷くのだった。







コリンドーネの重鎮たち、いまいちイメージが湧かなかったんだけれど
キャラを増やし、話を進めていった事によって、なんとか形に出来たよ!

侵略推進国が結束したこと、キュイが失われた事をきっかけに、他の国との協力を呼び掛けていくのかなと!
この話し合いの前後に、丁度若がコリンドーネにやってくるタイミングをイメージしてます!

コロポックルやドワーフの人たちもようやっと出せたわー。
前、種族ごとにはあんまり固まってない、とは言ったけれど
よくよく考えれば、同族じゃないと不便な所もあるだろうなぁと思い直しまして。
職人組合とか、一族の代表、ってな形で登場させてみました。
まだ模索中ではあるけれどね(笑)